最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)159号 判決 1951年4月26日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人奥木六郎の上申書について。
所論は、上告適法の理由とは認められない。ことに相被告人より上告趣意書が提出されますなればこれを有利に援用するとの上申趣意はその内容が未必的で不明確でこれに対し当審で判断を与えることができないから、適法な上告理由に当らないこと明らかであって、採用できない。
被告人宮寺石綿理化工業株式会社及び同宮寺真一の弁護人脇田久勝の上告趣意第一点乃至第三点について。
所論は、原判決が原審で被告人等が主張した法定の除外事由のあったこと並びに犯意就中違法の認識を欠いたこと又は違法性乃至責任阻却事由の存在は認められないとした認定を誤認であると主張し、その認定に基く原判決の判断を不当とするに帰する。従って、かかる事実認定(原判決は占領軍総司令部経済科学局からの公的の指示があったこと、被告人等が本件取引を正当の除外事由があるものと信じたり違法でないものと信じたりしたことは認められないと認定している)に属する非難は上告適法の理由とはいえないし、その他この点に対する原判決の法律上の判断はすべて正当であると思われるから、所論は採用し難い。
同第四点について。
所論緊急避難行為であるとの点は、原審において被告人並びに弁護人から毫も主張されなかったところであり、従ってこの点について原判決がこれを認めず、又はその事由の有無について何等判断を与えなかったとしても違法であるとはいえない。されば、本論旨も原判決の事実誤認を主張し、これを前提とする法律論に帰するから、採用できない。
よって、旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)